出演者インタビュー

 

 

2020222日、23日に上演される、「不思議の森の三日坊主」。その出演者たちに、思いを語ってもらいます。

 

 ひろし役・碧

 

 

「不思議の森の三日坊主」は4回公演のうち、2回ずつでキャストが入れ替わります。そのうち、2/22 15:00~の回と2/23 16:30~の回で主人公の「ひろし」を演じる、中学1年生の あおい に、話を聞いてみました。

 

 

 

ひろしと自分

 

こどものためのミュージカル実行委員会(以下「委員会」)「さて、今回は主役となる『ひろし』を演じるのですが、さっそくですが『ひろし』ってどんな人というか、どんな役だと思いますか?」

 

あおい「うーん・・・」

 

委員会「どんなイメージで役作りをしているか、というとどうでしょう」

 

あおい「うーん、気が小さくて臆病で、でもお守りや形見のパソコンをしっかり持っているような、頑固で芯の強いところがあって」

 

委員会「ふむふむ」

 

あおい「そういうところがあるせいか、周りの人と、なんというか、距離を置いてしまうような人、だと思います」

 

委員会「なるほど」

 

あおい「それが、ストーリーが進んでいく中で、いろいろなきっかけがあって、だんだん仲間たちと打ち解けていけるようになる、っていう感じですね」

 

委員会「成長していくキャラクターなんですね」

 

あおい「そうですね。実は私自身も人見知りなところがあって」

 

委員会「そうなんですか。舞台に出て、それも主役ができるくらいだから、あんまり緊張したりしないのかと思いましたけど」

 

あおい「いえ、人と話したりするのはいつも緊張します。でも、そうだからこそ、ひろしと似たところがあるな、と思ったりします」

 

 

 

誰でもきっと共感できるミュージカル

 

委員会「『不思議の森の三日坊主』というミュージカル全体はどうでしょう。どんなミュージカルだと思いますか?」

 

あおい「いろいろなことが詰まってる、と思います。どんな人でも、どこかに自分と重なるところを見つけられるんじゃないかな」

 

委員会「さっきの、人との距離感、とか?」

 

あおい「それもあるけど、友情とか、思いやりとか。それに、ヒロインとの、その、なんというか・・・」

 

委員会「淡い恋、みたいな」

 

あおい「(笑)・・・『不思議の森の三日坊主』自体はファンタジーだけど、でも別世界の話じゃなくて、きっと誰でも何か共感してもらえることがあると思う」

 

 

 

手ごたえ、実感

 

委員会「稽古を通じて、手ごたえというか、伸びている、成長している、と感じることってありますか?」

 

あおい「さっき言った、人見知りなところは、確実に小さくなっているな、と思います」

 

委員会「やっぱり、ミュージカルは一人じゃできないですしね」

 

あおい「そうですね、いろいろな人と話したりとか、コミュニケーションがあって。ひろしのように成長できているといいな」

 

委員会「稽古を見せてもらってますけれど、歌やダンスは確実に上手くなっていますよね」

 

あおい「ありがとうございます」

 

委員会「それよりもまずコミュニケーションのことが出てくる、というのが、面白いですね。それだけ自分で手ごたえがある、ということなんでしょうね」

 

 

 

好きな曲、気になる役

 

委員会「『不思議の森の三日坊主』で、一番好きな曲を挙げるとしたらどれですか?」

 

あおい「『数え歌』ですね」

 

委員会「2幕の最初だ」

 

あおい「そう。ひろしは登場しないけど、すごくきれいな歌だからできれば歌いたかった」

 

委員会「ダンスの振付も優雅ですよね」

 

あおい「本当に」

 

委員会「じゃあ、歌の次は役で。ひろしの他に、気になる役ってありますか?」

 

あおい「『光源氏』と『義経』ですね」

 

委員会「どっちも500年前の、呪われた子供たちですね。その中で光源氏って、なんていうか、いわゆる『オネエ』キャラですよね?」

 

あおい「そうそう。私は女ですけど、女が男役で、かつオネエってどうやって演じようかって、考えてました」

 

委員会「うん、確かに複雑だ。義経は?」

 

あおい「義経は、最初はひろしのことを嫌っているんですよ。信頼できないって。それがだんだんと、いつの間にか信頼関係ができて、仲間になっている。その移り変わりを表現するのが、難しそうだし、面白そうだなって」

 

委員会「研究熱心だなあ・・・。いや、脱帽です」

 

 

 

変わっていく過程、成長する姿

 

委員会「最後に、このミュージカルに興味を持ってくださった方に一言どうぞ!」

 

あおい「難しいですね(笑)。ええと、誰でもどこか共感できるところがあるミュージカルだと思います。その中でひろしは、さっきの話のように、人との距離感を縮められるようになっていく、打ち解けられるようになっていく、という成長があって。そういう、変わっていく姿というか、過程というか、それを、観ている人たちが自分自身に当てはめてもらえたらいいな、と思います」

 

ひろし役・悠太

 

前回の あおい と一緒に、おなじく「ひろし」を演じる小学6年生、ゆうた にも話を聞きました。ゆうたがひろしを演じるのは、2/22 18:30~の回と2/23 12:30~の2回です。

 

 

 

壁を越えていく物語

 

こどものためのミュージカル実行委員会(以下「委員会」)「それではまず、『ひろし』ってどんな人、どんな役だと思うか、教えてもらえますか?」

 

ゆうた「人との間につい壁を作ってしまう、そんな人なんだと思います」

 

委員会「さっきあおいも『人との距離』という話をしてくれたけど、同じような印象かな」

 

ゆうた「そうですね。その壁を、物語を通じて崩していくというか、乗り越えていくというか」

 

委員会「やっぱり、そこがひろしの成長なんですね。ところで、序盤から『まりこおばちゃん』っていう、すごく押しの強いキャラクターが出てくるじゃないですか」

 

ゆうた「はい」

 

委員会「ひろしの身内として登場するわけですが、彼女のことはどう思っているんでしょう?」

 

ゆうた「確かに身内なんですけど、やっぱり壁を作っているんじゃないかな。ひろしは両親を亡くしていて、でもまりこおばちゃんには実の親のようには甘えられない、というような」

 

委員会「『寂しくなんかない』っていう歌詞が出てきますけど、やっぱり寂しさがあるのかな」

 

ゆうた「そうだと思います。それがかえって壁になっちゃう」

 

 

 

「絶対受けると思った」

 

委員会「今まで出演したミュージカルは何作?」

 

ゆうた「『不思議の森の三日坊主』が5作目かな?」

 

委員会「若くしてベテランだ。その中で、今回の『不思議の森の三日坊主』をどう思いますか?」

 

ゆうた「台本を読んだ瞬間に、『これは絶対受ける』と思った」

 

委員会「頼もしい!その理由は?」

 

ゆうた「わかりやすい、ということかな。ただ簡単とか、易しいというわけじゃなくて、誰でも自分自身にあてはめて考えられるところがあって、だからわかりやすいんだと思う」

 

委員会「あおいも同じようなことを言ってくれましたね。共感って」

 

ゆうた「自分が主役だからということもあるかもしれないけれど、絶対共感してもらえる。誰でも楽しめると思います」

 

 

 

「だんだん強く」

 

委員会「日々稽古を重ねているわけですが、自分の成長って感じますか?」

 

ゆうた「(手で何かのしぐさをしながら)こうです」

 

委員会「(まねしながら)こう・・・?」

 

ゆうた「クレッシェンド。音楽の」

 

委員会「ああ!『だんだん強く』か!」

 

ゆうた「そうそう」

 

委員会「フォルテシモ(非常に強く)に向かってるわけね、なるほど。どんなところが?」

 

ゆうた「これもあおいと同じですけど、人と話したり、コミュニケーションとか」

 

委員会「やっぱり、歌とかダンスより、そちらの実感が強いんですね。見ている方としては、歌やダンスの上達をすごく感じるんですけどね」

 

 

 

亡霊たちの歌

 

委員会「『不思議の森の三日坊主』の中から、好きな曲を教えてください」

 

ゆうた「『運命の糸』です」

 

委員会「どんな曲でしょうか?」

 

ゆうた「ひろしは500年前の呪われたこどもたち、僕らは亡霊たちって呼んでるんですが、その亡霊たちを助けようとするんです。でも力及ばずに負けそうになって、そのときに亡霊たちが歌うんです」

 

委員会「クライマックスですね」

 

ゆうた「あなたを信じる、あなたと運命の糸がつながっていることを信じる、って。聞いてると感動が出し切れなくってウワーってなる」

 

委員会「ウワーって(笑)気持ちは大変伝わってきました。じゃあ、ひろし以外で面白そうな役ってありますか?」

 

ゆうた「信長ですね」

 

委員会「亡霊のうちの一人ですね。どんなところに興味がありますか?」

 

ゆうた「信長は、亡霊の中でも引っ張っていく存在というか、リーダー的なんです。そういうところを演じてみたいなって」

 

委員会「確かに、最初は引っ込み思案のひろしとはまた違った個性で、比べてみるのも面白そうですね」

 

 

 

ひろしの成長

 

委員会「観客の皆様にメッセージをいただけますか?」

 

ゆうた「かっこいいこと言っていいですか?」

 

委員会「どうぞ!」

 

ゆうた「まばたきしないで見てください!」

 

委員会「(笑)大きく出たね!」

 

ゆうた「それで、ひろしが成長していく流れというか、それを感じてほしい」

 

委員会「わかりました。ありがとうございます!」

 

 

 

実はゆうたの祖父は元劇団四季の中心的俳優で、現在は横浜丘の手ミュージカルスタジオの塾長、そして「不思議の森の三日坊主」では演出統括を務める、岡本 隆生です。そんな環境で育ったこともあって、早いうちからミュージカルに興味を持ち、自然に稽古も始めるようになったそう。

 

 

 

過去に何度かミュージカルの舞台を経験してきたゆうたも、今回が初の主演。どんな姿を見せてくれるか楽しみですが、もしかしたら一番楽しみにしているのはゆうた自身かもしれない、インタビューをしながらふとそんなことを思いました。

 

 

 

 なぞなぞの子ども役・ゆの、めい、ともみ、あんり

 

今回は出演者の中でも低学年のこどもたち。小学3年生の ゆの、2年生の めい、ともみ、1年生の あんり に、お話を聞かせていただきました。

 

 

 

というよりも、おしゃべりの最中にお邪魔させていただきました・・・

 

 

 

こどものためのミュージカル実行委員会(以下委員会)「えーと、ちょっとお話を・・・」

 

四人「(楽しくおしゃべり)」

 

委員会「(これは手ごわい)」

 

四人「(にぎやかにおしゃべり)」

 

委員会「ちょっといいですか!?」

 

四人「はーい?」

 

委員会「(よしよし)『不思議の森の三日坊主』について話を聞かせてください!」

 

四人「どうぞー」

 

 

 

委員会「稽古は楽しいですか」

 

四人「楽しい!」

 

委員会「おお、即答ですね。どんなところが?」

 

ゆの「え?うーん」

 

めい「全部です!」

 

委員会「全部か―。勢いで答えてません?」

 

ゆの「友だちがいっぱいいるところ!」

 

委員会「それはいいですね!」

 

 

 

委員会「歌、ダンス、演技だったらどれが好きですか?」

 

めい「演技!」

 

ゆの「ダンス!」

 

めい、ゆの「エンギダンスエンギダンス・・・あははは!」

 

委員会「(やっぱり手ごわい)あんりさん、ともみさんは?」

 

あんり「ダンスかな」

 

ともみ「わたしもダンス」

 

委員会「ダンス人気ですね。身体を動かすのがいいのかな」

 

 

 

委員会「『不思議の森の三日坊主』は好き?」

 

四人「好き!」

 

委員会「どんなところが?」

 

めい「何だか面白いし楽しいし」

 

委員会「やっぱり勢いで答えてません?友だちがいっぱいできればそれだけで楽しいのかな」

 

ゆの「楽しいよ!」

 

委員会「同年代の友だちもたくさんできたと思いますが、年上の人たちとはどう?仲良くしてる?」

 

めい「してる!いっしょに遊んでもらったりとか!」

 

委員会「中学生とか、それ以上の人たちとは?」

 

ゆの「すごいなーって。ドラゴンダンスとか」

 

委員会「目標というか、あこがれというか、そんな感じでしょうか」

 

 

 

委員会「やっぱり、たくさんの人に観に来てほしいよね」

 

四人「うん!」

 

委員会「家族や親戚は来てくれるのかな」

 

ゆの「来る来る、みんな来てくれる」

 

めい「うちも!でも、お兄ちゃんはちょっとなー」

 

委員会「なんで?」

 

めい「(口をとがらせて)『あれはよかった、でもこっちはまだまだだね』とか言うし」

 

委員会「(笑)まあ、それだけ気にしてくれているってことですよ。友だちは?」

 

ゆの「来てくれると思う!」

 

めい「うちは遠いからなー」

 

委員会「やっぱり、できれば来てほしいですね!」

 

 

 

委員会「ずばり、好きな先生ってどなた?」

 

四人「みさき先生!」(古谷 美咲、演出補助)

 

ゆの「あと、みか先生!」(岩本 視加、演出補助)

 

あんり「のりこ先生!」(岡本 紀子、演出補助)

 

委員会「(女性の先生人気だな)」

 

保護者F「うちの息子は隆生先生みたいになりたいって言ってました」

 

委員会「(渋いな・・・先生方はみんな人気、と)」

 

 

 

委員会「じゃあ、最後に一言・・・」

 

ゆの「あ、稽古始まるって!ドラゴンダンスだって!」

 

四人「見に行こう!」

 

委員会「あ、行っちゃった・・・」

 

 

 

終始にぎやかだった四人。よく話す子もいれば少し静かな子もいて、それぞれの個性を感じました。

 

そんな彼らの見せ場は「なぞなぞ なあに」。総勢13人の子どもたちが舞台狭しと歌い、ダンスを繰り広げます。

 

笑顔とエネルギーがあふれるシーンは、必見です!

 

 

 

 

出演者インタビュー こたろう、ひなこ

 

 

 

徳島県に、東福寺というお寺があります。

 

 

 

このお寺では夏休みに全国から集まった小学生が三日間を過ごす、「三日坊主修行」を開催しています。集まったこどもたちは自然の中で様々な体験をし、交流し、そして成長していきます。

 

「不思議の森の三日坊主」は、実はこの東福寺から着想を得て書かれたミュージカルなのです。

 

 

 

こたろう、ひなこの兄妹は、2019年の夏にこの東福寺の三日坊主修行に参加してきました。そして今回、「不思議の森の三日坊主」に出演します。そんな二人に、ちょっと話を聞いてみました。

 

 

 

こどものためのミュージカル実行委員会(以下「委員会」)「こたろうさん、ひなこさんは本物の三日坊主修行に行ってきた、ということですが、そちらではどんなことをしたのでしょうか?」

 

こたろう「スタンプラリーっていうか、オリエンテーリングで森に行ったり、キャンプファイヤーしたりとか。あと、自分で食事に使う箸を作った」

 

ひなこ「スタンプラリー楽しかった!」

 

委員会「『不思議の森の三日坊主』では肝試しに行ってますが、本物の三日坊主修行では?」

 

ひなこ「行ってない!」

 

こたろう「お墓はあるんだけど、夜は本気で暗いし、危ないと思う」

 

委員会「まあ、そうですよね。田舎の山の中だそうですし」

 

 

 

こたろう「三日坊主修行を、夏休みの自由研究にしました」

 

委員会「ノートにまとめたんですね。どれどれ・・・おお、これはすごい」

 

こたろう「これは般若心経。毎日朝と夜に読みました」

 

委員会「こちらはキャンプファイヤーの様子と、修行中の様子ですね」

 

ひなこ「いろんな人と修行したよ!」

 

委員会「結構たくさん参加しているみたいですね」

 

こたろう「30人くらいかな」

 

委員会「仲間が多くて楽しそうですね!」

 

 

 

委員会「『不思議の森の三日坊主』は楽しいですか?」

 

ひなこ「楽しい!」

 

こたろう「歌と演技が好きかな」

 

ひなこ「ダンスとか歌ったりとかがいい!」

 

こたろう「『不思議の森の三日坊主』でやってる肝試しは、本当にやったら面白いんじゃないかな」

 

委員会「うーん、でもやっぱり夜は危ないからね。お化けはともかく、怪我でもしたら大変」

 

 

 

委員会「『不思議の森の三日坊主』たくさんの人に観に来てもらえるといいですね」

 

こたろう「友だちとか、知っている人には来てほしい。でも、知らない人も来てほしい」

 

ひなこ「学校の友だちとか!」

 

委員会「そうですね、修行の成果と、稽古の成果を期待しています!」

 

 

夏に三日坊主修行をしてきた二人。楽しかった、また行きたい、と話してくれました。

 

 

小学1年生のひなこも、歌、ダンス、それに台詞があります。稽古の日々が続きます。

 

 

おつとめやキャンプファイヤーの様子が作文と写真でまとめられていました。それ以外のページにもたくさんのことが書かれていて、三日坊主修行の充実感がうかがわれました。

 

 

遠く徳島の三日坊主修行をヒントにして、横浜に生まれたミュージカル「不思議の森の三日坊主」。こどもたちの経験、交流、成長が、どんなストーリーになって現れるか、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。

振付助手 古谷 美咲 インタビュー

 

 

 

 

「不思議の森の三日坊主」で振付助手を務める古谷 美咲は、積み重ねてきたバレエ、ダンスの技術と共に、様々な舞台に出演を続けてきました。そして今回は立ち位置を変え、こどもたちを指導する立場から舞台を創り上げようとしています。その一方で現役の大学生として勉強を続け、夢を追いかけている彼女に、舞台について、出演するこどもたちについて、そして自身について、お話を聞いてみました。

 

 

 

 

学ぶこと、教えること

 

こどものためのミュージカル実行委員会(以下「委員会」)「古谷さんは現役の大学生とのことですが、今はどのような勉強をしているのですか?」

 

古谷「舞踊学専攻に所属しているので、ダンスの勉強が中心です。今はジャンルを決めずに、バレエとかジャズダンスとか、広く勉強しています」

 

委員会「なるほど、これから志望に合わせて絞っていく、ということなんですね」

 

古谷「そうですね。それに、中学高校の体育教師の教職コースも取っているので、そちらの勉強もしています。バスケとか陸上とか、何でもやってます」

 

委員会「なかなかの充実ぶりですね。ダンスが中学で必修になりましたし、教職コースでもダンスは必要になりますよね」

 

 

 

委員会「今回はこどものためのミュージカルということで、出演者もこどもたちが多いのですが、振付助手として彼らを指導する際に、勉強したことが役立ったりしますか?」

 

古谷「大学の勉強が役に立つこともありますし、振付助手としてやっていることが勉強になることも多いです。たとえば、大学の授業で、先輩たちを生徒に見立てて模擬授業をする、ということがあるんですが・・・」

 

委員会「それは結構プレッシャーがありそうですね」

 

古谷「そうなんです!でも、その時の先輩たちって、こちらの言うこと、やることに、やっぱりどこか考えながら反応している感じがするんです。ところが本当のこどもたちは、反射的にすごくいろいろな反応を返してくる。そのひとつひとつに対して、どうやったら伝えたいことが伝わるだろうか、ということをいつも考えています」

 

委員会「状況にもよるでしょうし、それぞれの個性もありますよね」

 

古谷「そうですね。身体を動かして覚えてもらうのがいいのか、言葉で伝えて頭で考えてもらうのがいいのか、その時々の使い分けが必要、ということも実感しています」

 

 

 

 

 

「振付助手」としての意識

 

委員会「こどもたちへの指導が中心ということで、特に気を付けていることはありますか?」

 

古谷「さっきのお話とも関連しますが、それぞれの個性、キャラクターの違いに注目するようにしています。技術的には、学年とか、これまで習ってきたこととかで差がありますが、何かができる、できないということではなくて、それぞれが個人として持っている特徴に合わせよう、と思っています」

 

委員会「本当に、みなさんそれぞれ個性的ですよね」

 

古谷「それから、これは自分でもちょっと意外なんですが、私はダンス、振付中心で演出に関わっていくつもりだったんですが、稽古を見ているとダンス以外のところ、特にお芝居について気づきが多かったんです」

 

委員会「そうなんですか。具体的にはどういったところでしょう?」

 

古谷「たとえば、セリフがない時の立ち方、動き方、といったことです。普段の生活で人と会話して、相手が話しているときは自然に聴きますよね。でも、それが舞台の上では分からなくなってしまうんです」

 

 

 

委員会「不自然に動いてしまったり、どこを見ていいか分からなくなってしまったり、といったことでしょうか」

 

古谷「そうですね。もちろんお芝居ですから、全部が普段通りではないんですが、じゃあどうするかが分からない。これは私自身が出演したときもそうだったんです。でも、演出サイドから見ていると、中にはそういうことがすごく上手な人もいて」

 

委員会「それは参考になりそうですね」

 

古谷「すごく得るものがあります。学ばせてもらっている、という面も大きいです。その他に意識していることというと、あとは年齢、立場のことですね」

 

委員会「と言いますと?」

 

古谷「演出、振付の先生方と、こどもたちの間にいるような立場だと思うんです。年齢的にもちょうど間に入りますし。なので、先生方のおっしゃることを細かく、かみ砕いて伝えるとか、逆にこどもたちの声をなるべく聞くようにしたりとか、そういうことも意識しています」

 

委員会「なるほど、確かにこどもたちが一番相談しやすいのは、古谷さんかもしれませんね。こどもたちへのインタビューでも『好きな先生』で真っ先に名前が挙がっていましたし」

 

古谷「恐縮です、光栄です(笑)」

 

 

 

舞台に上がるときの気持ち

 

委員会「今まではずっと演じる側だったわけですが、今回は指導する側になって、こどもたちからは目標とされる存在、憧れの存在になったんじゃないかと思うんです」

 

古谷「そうなんですか?本人には全然自覚がないんですが(笑)」

 

委員会「そうなんです。時々そういう話が漏れ聞こえてきますし、『好きな先生』でもありますしね。そこで、そういう立場から、こどもたちに言ってあげたいことってありますか?」

 

古谷「難しいですね・・・。ええと、今回に限らず、ミュージカルの舞台って公演ごとに区切りがつくので、公演が終わるといなくなってしまう子もいると思うんです。今回は横浜丘の手ミュージカルスタジオ(YOM)の生徒が中心ですけれど、みんなそれぞれの事情がありますから、公演の後でやめてしまう人もいるかもしれません」

 

委員会「そうですね。他のことを始めたりとか、勉強に集中するとか、いろいろあると思います」

 

古谷「でも、舞台にあがるとき、みんな心の根元のところには、同じ気持ちを持っているはずなんです。出演する人たちはみんな、きっとわかると思います。その気持ちが、とても貴重なんだと思ってほしい。もしミュージカルをやめてしまったとしてもその気持ちは大切にしてほしいし、そして、出演したみんなが同じ気持ちだったんだということを忘れないでほしい、と思います」

 

委員会「ありがとうございます。親として、娘にしっかり申し聞かせます」(注:聞き手も出演者の保護者)

 

 

 

悩んだ時期を越えて、挑戦は続く

 

委員会「こどもたちに向けたメッセージをいただきましたが、古谷さん自身も夢や目標を持って努力されている真っ最中だと思います。今はどういったことを目ざされているのでしょうか」

 

古谷「そうですね・・・以前の私だったら、迷わず『劇団四季を目ざしている』って答えたんですけれど」

 

委員会「少し変わってきたのでしょうか?」

 

古谷「去年の春ごろ、ちょうどこの『不思議の森の三日坊主』のオーディションが始まるころですね、ちょっと・・・そうですね、悩んだ時期があったんです。それ以前は、自分がやっていることについて『何のために』と聞かれれば、『ミュージカルのため』『劇団四季の舞台に立つため』ってすぐ言えたんですが、でも、その頃は即答できなくなっていて。そんな自分に気づいて、すごいショックだったんです」

 

委員会「何か、心境の変化があったのかもしれませんね」

 

 

 

古谷「『不思議の森の三日坊主』で、出演ではなくて振付助手をさせていただくことを決めたのも、その時期でした。演出側の姿も知ってみよう、と思って、志願させていただいたんです」

 

委員会「視点を変えてみた、というわけですね」

 

古谷「ありがたいことに、演出サイドには受け入れていただけました。そうしたこともあって、以前とは考え方が変わってきました。生意気な言い方ですけれど、『劇団四季はゴールじゃない』と思うようになったんです」

 

委員会「その先がある、と」

 

古谷「はい。劇団四季に入るのはすごく大変でしょうけれど、努力を重ねていればきっと入れる。でもそれは終わりじゃなくて、その後もいろいろな挑戦が続いていく。それはきっと劇団四季を目指さなくても同じで、例えば今私は教職コースを取っていますが、もしそれで学校の先生になったとしても、やっぱりその時は何か次の目標を追いかけることになると思うんです」

 

委員会「そうですね、意欲ある限りずっと挑戦は続いていく」

 

古谷「だから今は、将来やりたいことをやれるように、いつかその時のために、勉強を続けたいと思っています」

 

委員会「学校の勉強も、今回の演出補佐としての経験も、きっとその時活きるのでしょうね」

 

 

 

舞台にしかない「何か」

 

 

委員会「『不思議の森の三日坊主』についても教えてください。どんなところが魅力でしょうか?」

 

古谷「こどもたちが中心ということで、やっぱり、彼らのエネルギーでしょうか。技術面とは基準が違いますね。特に、みんなの呼吸が合った時の圧というか、迫力はすごいものがあります。ただ、今はまだそこまでの力が出せたことは少ないので、最後の仕上げで気持ちを揃えていきたいですね」

 

委員会「そこは演出サイドとしても腕の見せ所ですね」

 

古谷「あと、さっきのお話にもありましたが、舞台に上がるみんなの気持ちを、観ている方にも感じてほしいです。今の子たちがどんな想いを持っているか、分かってほしいですね」

 

委員会「ありがとうございます。最後に、Webページをご覧の方、公演を観に来て下さる方に一言お願いできますか」

 

古谷「まず、このインタビューをご覧くださってありがとうございます。都筑公会堂はYOMの原点ですし、私自身の初舞台も都筑公会堂で、すごく思い入れが強い場所です。その場所で、YOMの歴史を感じて、そして今の姿を見てほしいと思います。生の舞台には、映像とは違う波動というか、そこにしかない何かがあります。観ないと分からないことがあります。今まで舞台を観たことがない人は、いえ、そういう人にこそ、ぜひ見て頂きたいです!

 

 

 

こどもたちにとってみれば年齢が近く、明るい「みさき先生」は、親しみやすくて、それでいて憧れの人。一方で、その確かな技術と経験は、スタッフたちや実行委員会、保護者にとっては頼もしい存在です。

 

 

 

インタビューにもあったように、生の舞台には確かに、「そこにしかない何か」があります。それはもしかしたら、役者たちの想い、そしてその後ろにいるスタッフたち、舞台を創り上げるために関わってきた全ての人たちの想い、そういったものなのかもしれません。

 

 

 

「不思議の森の三日坊主」の舞台には、いった何があるのか。2/22,23,都筑公会堂で、ご覧になってみませんか。

 

作曲者インタビュー 杉山 健太郎

 

 

 

2020222日、23日に上演される、「不思議の森の三日坊主」。今回は、作曲、編曲を手掛ける 杉山 健太郎 が、「不思議の森の三日坊主」の音楽について語ります。

あくまで穏やかに、静かに語る中に、音楽に対する熱い想い、情熱を感じる。向かい合って話を聞きながら、そんな印象を持ちました。

 

 

驚きから始まるストーリー

 

こどものためのミュージカル実行委員会(以下「委員会」)「お時間いただきありがとうございます。さっそくですが、今回作曲、編曲を手掛けていただいた『不思議の森の三日坊主』についてお話をお聞きします」

 

杉山「はい、よろしくお願いします」

 

委員会「今回、音楽を手掛けるにあたって、最初に台本などで『不思議の森の三日坊主』のイメージを作ったと思うのですが、第一印象はいかがでしたか?」

 

杉山「この『不思議の森の三日坊主』は初演が22年前で、その時の映像がある、ということだったので、最初にそれを見たんです」

 

委員会「なるほど、そうすると、ある意味ではひとつの完成した形を見るところから始まったんですね」

 

杉山「そうですね。それで、最初に動画を見始めた時の感想は、とにかく驚き、だったんですよ」

 

委員会「驚き、ですか」

 

杉山「そう。幕が上がって、蝉の声がして、子供たちがお経を読んでいる。それは『三日坊主』(注:このミュージカルでは、こどもたちがお寺で3日間修行すること)ということだから、理解できる。ところがそこからいきなりサンバが始まる」

 

委員会「確かに、般若心経からのサンバですからね」

 

杉山「いったいこれは何が始まったんだ、と思って。ものすごい意外性だったんですよ。でもそれが自分にとっては、なんていうかな、すごい強力な『つかみ』で」

 

委員会「改めて言われてみるととんでもない展開ですね」

 

杉山「どんな世界観なんだ、何が始まるんだ、っていう。それで続けて観ていくと、きちんとストーリーが流れていく」

 

委員会「展開自体は、割と王道なんですよね」

 

杉山「そう、ちゃんと納得できる、いいストーリーになっている。多分、観てくださる観客の皆さんも、驚くと思いますよ」

 

 

 

こどもたちが歌う、ということ

 

委員会「杉山さんには通し稽古を見ていただきましたが、作曲した時のイメージと比べてどうでしたか?」

 

杉山「今回は全曲を作曲したわけではなくて、22年前の公演の楽曲を使っているところもあります。そんなこともあって、もともと持っていたイメージからすごく大きく変わった、ということはなかったですね」

 

委員会「特に今回は『こどものため』ということで、出演者もこども中心なのですが、そういうことは作曲の際に意識されたのでしょうか」

 

杉山「これは演出とも話していたことなのですが、技術、ということに関しては、やはりどうしても経験を積んだ大人たちにはかなわない、という面はあると思います。それは音域の広さであったり、あるいは声のコントロールであったり。メロディーをあまり動かしてしまうと追いきれなくなったり、といったことですね」

 

委員会「やはり、意識することはあるんですね」

 

杉山「ポップな味付けにして、こどもたちが動きやすいようにしたりとか。ただ、だからといってこども向けの曲を作った、ということは全くなくて、曲作りの方法論は変わらないですね」

 

委員会「そういう意味では、『手加減』はなかったと」

 

杉山「それはなかったです。5月のオーディションも見たのですが、小さな子でもすごいエネルギーがあって、驚きましたね」

 

 

 

音楽を創る「地図」

 

委員会「今回作曲された曲の中で、特に気に入っている、思い入れのある曲ってありますか?」

 

杉山「思い入れというか、苦労した曲ならありますよ」

 

委員会「苦労ですか。どの曲でしょう?」

 

杉山「『数え歌』ですね」

 

委員会「2幕の最初ですね。どういった苦労をされたのでしょう」

 

杉山「この曲は、まず1から10までの対等な歌詞が用意されている、というところから作曲が始まったんです。この歌詞をどうやって今の音楽の形にしてくか、というところが、かなり悩みましたね」

 

委員会「いわば、10番まで歌詞がある、という状態ですね」

 

杉山「そうです。今の音楽って普通、10番なんてないじゃないですか。それをどうやって収めるか。スケッチもかなり描きました」

 

委員会「スケッチ、ですか」

 

杉山「歌詞と曲を並べて、一つのかたまりを作り、AとかBとか名前を付けていくんです。それらをつなぎ合わせたらどうなるのか、Cっていうメロディーが新たに必要なのか、とかっていうことを考えながら描いていく。地図を描くみたいな感じです」

 

委員会「音楽の中に、地図がある。なんだか意外な組み合わせで、面白いですね。そういえば、『数え歌』は、主人公の『ひろし』を演じる あおい が好きな曲だそうですよ」

 

杉山「そうなんですか」

 

委員会「ただ、そのシーンにひろしは出ないので、歌えなくて残念がっていました。振り付けも優雅で美しいんです」

 

杉山「見ました。やっぱり、組み合わせると一層いいところが出て、パワーアップしますね」

 

 

 

志の高い音楽、「三重唱」

 

委員会「音楽として、『不思議の森の三日坊主』の見どころはどんなところでしょうか」

 

杉山「『三重唱』に注目してほしいですね。この歌ってすごく志の高い音楽だと思うんですよ」

 

委員会「難しい歌ですよね。物語としてはいよいよクライマックス、というシーン」

 

杉山「この歌の前に、三者三様の立場からそれぞれの歌があるんです。『三重唱』って、それらをすべて重ねてひとつの音楽にしようという、野心的な試みなんですよ」

 

委員会「三者が皆、歌詞もメロディーも、役としての想いも違うんですよね」

 

杉山「そう。これはきっと、観る方は最初から知っていた方が楽しめると思います。このミュージカルの中には、そういう音楽があるんだっていうことを」

 

 

 

委員会「最後に、お越しくださる皆様に一言お願いできますか」

 

杉山「見終わった後に、ほっこりというか、優しい気持ちになれるミュージカルだと思います。ぜひ多くの人にこの世界を体験していただければ嬉しいですね」

 

 

 

今回は作曲・編曲だけでなく、劇中でギターによる生演奏も披露する杉山。最初に動画で見た時にはその世界観に驚愕したという「不思議の森の三日坊主」に、今度は音楽を通じて新しい息吹を吹き込んでいきます。

 

 

 

過去に作られた曲と、新しい曲。それらの音楽に、ダンス、演技。いろいろなものを組み合わせ、融合させながら創り上げられるミュージカル「不思議の森の三日坊主」に、ごご期待ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

「不思議の森の三日坊主」は、劇団四季の主力俳優としてこれまで数多くの舞台に立ち、現在はオリジナル・ミュージカルの演出や台本執筆に活躍する岡本 隆生が「作・演出統括」を。TVCMなどを含む様々な振付、ダンス講師としても活動しながら自身も数多くの舞台に立ち続ける中島 康宏が、「演出・振付」を務める。

 

 

 

確かな技術、豊富な経験、そして何よりも舞台にかける情熱を持つ二人が、この「不思議の森の三日坊主」をどのように創り上げていくのか。そして出演者たちを、こどもたちをどのように見つめているのか。その胸の内を語る。

 

 

三日坊主修行との出会いが生んだ、オリジナルの作品

 

 

 

作・演出統括を務める、岡本 隆生。新聞記事をきっかけに三日坊主修行と出会い、この作品が生まれたという。

 

「このミュージカルは、新聞記事から始まったんですよ」

 

『不思議の森の三日坊主』で作・演出統括を務める岡本 隆生は、そう語る。

 

 

 

「四国、徳島に、東福寺というお寺がある。そのお寺では夏休みに、三日坊主修行と称して、全国から集まった小学生たちに3日間の修行をさせている、という記事だったんですね。これは面白そうだ、とピンときて、実際に東福寺に行ってみたんですよ」

 

 

 

そこで岡本は東福寺の住職に会い、また現地を訪ね歩いてみて、ミュージカルの構想を得たのだという。

 

「三日坊主修行で、こどもたちは朝夕の勤行をし、森の中を散策し、渓流に遊ぶ。3日が過ぎるころには、みんながらっと変わるそうなんです。こどもたちの方も、『また来たい』って言って帰っていくそうなんですね。そんな話をお聞きして、そして森や川の様子を見せていただいて、これはひょっとしたらファンタジーができるんじゃないか、と思ったんです」

 

 

 

そのイメージには、日本各地に残る伝承、伝説が結びついているという。

 

「東福寺の近くには、今でこそ美しい渓流が流れていますが、もともと四国は昔から水に苦労してきた土地なんです。昔は少し日照りが続くと、すぐ乏しい水の奪い合いになってしまっていた。もちろん、水に苦労していたのは四国に限った話ではなくて、干ばつや洪水に苦しめられていたのは土地は多かった。だから、その水に対する畏敬の念が、『龍』、『龍神』という言い伝えを生んで、それがたくさん全国に残っている。そんな『龍』と『三日坊主修行』を組み合わせてみようと思いついたんです」

 

 

 

「そういう意味では、最初は気楽な思いつきで作ったストーリーだった、と言えるかもしれませんね」

 

岡本は、そう言って笑う。

 

 

 

「『龍』は、このミュージカルでは『ドラゴン』としていますが、超自然的なものの象徴ですね。これにこどもたちが対峙する。詳しくは舞台でご覧になっていただきたいですが、よくできたストーリーになっていると思いますよ。今回は『こどものためのミュージカル』ということにしていますが、大人が観ても十分面白いと思いますよ」

 

 

 

そのストーリーを、演出・振付を中島は高く評価する。

 

「とても質の高いストーリー、作品だと思うんです。残念ながら、日本のミュージカルにはオリジナルの良質な作品が少ないのが現実。そんな中で、今回、ご縁があってこの『不思議の森の三日坊主』に関わらせていただいたのは、とてもありがたいことですね」

 

 

 

その「縁」は、劇団四季での出会いだったという。

 

「岡本さんとは、劇団四季の舞台でご一緒させていただきました。そのときの岡本さんは、とてもあたたかい芝居をされる方で。すごく学ばせていただくことが多かったんです。その時以来、いろいろとお声をかけていただいています」

 

 

 

何かをつかむ、そして輝く瞬間

 

今回、中島は演出とともに、劇中全ての曲の振付も担当する。

 

「出演者はこどもたちが多いですが、だからといって手加減する、といったことは全く考えていないですね。大人もこどもも、みな一緒にこの劇団という、いわば同じ船に乗った仲間で、年齢は関係ないです」

 

 

 

そして中島は、一人ひとりに合わせた振付が必要だ、と力説する。

 

「その人の魅力が引き出せると思ったら、振付を変えることも含めて何でもやります。技術的にはそれぞれ差があるかもしれませんが、大事なことは、その人の魅力を最大に引き出すこと。その人が輝くことが何よりも重要なんです」

 

 

 

「振りを付けて、練習を重ねていくと、『人が変わっていく』んです」

 

中島はそう言って続ける。

 

 

 

「最初は、教わった通りに動きをなぞっている。ですが、ある時、その振り、動きの意味を自分なりに解釈して、何かをつかむんです。何というんでしょうか、人が『開く』とでもいうか、そうするとその人が舞台で輝き始めるんですよ」

 

 

 

これに岡本も同意する。

 

「何かをつかむ、という瞬間は確かにある。こどもたちがこういったミュージカルの中でそういった経験をする、というのは、学校の中だけではなかなか難しいかもしれない。そういう意味では、ミュージカルには教育という側面もある、と思います。最初は受け身で、教えられたことをやるだけだったこどもたちが、ある時主体性を持って扉を開ける。自力で何かをつかんで、それを自信に変えていく。私はそういう『つかんだ』瞬間を見たい。そうなるとこどもたち自身も楽しいし、そこからの伸びは速いですよ」

 

 

 

中島も、ダンスを通じた成長、ということを語る。

 

「ダンスは、身体の動きを使って表現する、という経験ですね。特に小さいこどもたちは、自分が考えていること、感じていることを言葉ではなかなか表現しきれないことがあります。それが、ダンスによって表現できるようになる。やってよかった、と感じてもらえる瞬間、だと思います」

 

 

 

信頼、そして感謝

 

今回の「不思議の森の三日坊主」は、岡本が「作・演出統括」、中島が「演出・振付」を務める。二人は互いのことをどう見ているのか。岡本は、中島を次のように評する。

 

「中島さんは、非常にシャープな振りを付ける。同時に想像力も非常に豊か。だから、常に意外性のある、意表を突く舞台を作り上げてくれます。それに人間性も実に素晴らしい。誰からも好かれて、頼られる。もちろん私も、本当に頼りにしていますよ」

 

 

 

期待に応えられるようにしたい、と中島は笑い、そして岡本の印象を語る。

 

「岡本先生は、言葉を大切にされる方です。ほんの一言の台詞でも、正しい気持ちで語られているかどうかを見抜いて、とことん直していく。その結果できあがった演技は、例えば『おはよう』という一言だけでも違ってくるんですよ」

 

 

 

そして中島は、「作・演出統括」という岡本の立ち位置について、次のように言う。

 

「脚本を書いて、自身で演出をする、ということは、すごく価値のあることだと思います。一つ一つのセリフ、シーンを、どういう意図を持って書いたのか、ということを知っているからこそできる、という演出があると思うんですよ」

 

 

 

しかし岡本は、「不思議の森の三日坊主」については、必ずしも自分が脚本を書いたわけではない、と言う。

 

「この作品は、最初の発案は私でしたが、脚本自体は妻が書いたんですよ。もちろんいろいろと相談やアドバイスはしましたけれどね。妻は大変に頭のいい女性で、この脚本もとても良いものに仕上がっていると思う。脚本以外でも随分と助けてもらっていて、いつも感謝しています」

 

 

 

そう言ってから、岡本は笑って付け加えた。

 

「まあ、ぶつかり合いになることもままありますがね」

 

 

 

作品の魅力

 

 

 

このミュージカル、「不思議の森の三日坊主」が発するメッセージとは?その問いに、岡本が答える。

 

「いろいろな見方はできると思いますが、一つのポイントとして、大きなものにどう立ち向かうのか、ということが挙げられます。劇中の『ドラゴン』という存在は、乗り越えなくてはならない大きな存在です。そういったものにどう対峙するのか。覚悟のしかた、心の持ち方、そして仲間との協力。このミュージカルに出演する人たち、あるいは観てくださる観客の皆さんが、いずれ何かに立ち向かわなければならない時、決断する時の助けになるかもしれない。ぜひ、こどもたちが『ドラゴン』と向き合う、そのシーンに注目してみてほしいですね」

 

 

 

一方で中島は、主人公の「ひろし」に注目する。

 

「今はこどもも大人も、スマホで何でも済ませてしまうようになってしまっています。ひろしは常にパソコンを持ち歩いている少年で、それはスマホを持ち歩く姿と重なりますが、パソコンやスマホだけでは出せない答えがあるんじゃないか、と思うんです。何か大切なことを見落としていないか。スマホで調べたことだけが正しいわけではない、この舞台からは、そんなメッセージも発信されています」

 

 

 

そして、この作品の魅力を次のように語る。

 

「今の時代に必要なものを詰め込んだ作品だと思います。そして、観終わった後にはきっと、あったかい気持ちになれますよ」

 

 

 

岡本も言う。

 

「曲数も多いし、ジャンルも広い。どのシーンも楽しんでもらえると思います。贅沢なことを言えば、今回はダブルキャストなので、回によって同じ人が違うポジションにいたりする。両方観ると、きっとさらに楽しんでもらえるはずです」

 

 

 

そして強調する。

 

「まず観てほしい。コスト・パフォーマンスなんて言うわけじゃないですが、絶対に、値段以上の価値がありますよ」

 

 

 

 

 

熟練の経験と、若い才能。二人が手を組んで創り上げる舞台は、きっと期待を超える世界を見せてくれる。二人の姿には、そう確信させるだけの想いがあふれていた。

 

 

 

2020222日、23日、都筑公会堂で。岡本の言葉を借りれば、「まず、観てほしい」。