「不思議の森の三日坊主」と「ジークフリート」

 

お陰様で二月二十二日、二十三日、「不思議の森の三日坊主」の公演は無事幕を閉じることが出来ました。全国からお集まり頂き、熱心にご覧頂いたお客様にまずは御礼申し上げます。そして、この作品を高めて下さった関係者の皆さまには深く感謝致します。今回のミュージカルは稽古始めに抱いていた私の予想を、はるかに越えた素晴らしい舞台になったと思います。

 

しかし、何といっても子供たちの頑張りとお父さん、お母さんたちの情熱的なサポートだったと思います。子供たちが十か月間一生懸命努力して来たことが、あの舞台の上で見事に花開いて、キラキラと輝いてくれました。お客様もあの三日坊主の舞台を観て、きっと心から癒されたことだと思います。本当に、本当にお疲れ様でした。

 

さて、私たちはもう次回の公演企画の準備をしています。

 

ジャン・ジロドウ原作「ジークフリート」をミュージカルに致します。ジロドウ独特の格調高い、言葉の美しさは聞いているだけで心を和ませてくれます。そして素晴らしい音楽を新進気鋭の作曲家、志田佳則君が創ってくれました。

 

戦勝で賑やかなフランスと、一方では敗戦で大負債を抱えて苦しむドイツが舞台となっています。

 

第一次世界大戦、ドイツとフランス激戦の最中、フランスの新聞記者で著名な評論家だったジャーク・フォレスチエは出征するが、戦乱に巻き込まれて行方不明になる。終戦後、彼の生還を「今か、今か?」と待ち望んでいた恋人の女流彫刻家、ジュヌビエーブは、ドイツの言語学者から突然「至急、ドイツに来られたし!」と云う電報を受け取る。彼女は「もしかしてジャークの手掛かりが見つかるかも知れない」と思い、ドイツに馳せ参じるが、そこで目にしたのは、戦争で全く記憶喪失となったジャーク・フォレスチエだった。しかも彼はドイツ政府の長官として、敗戦後のドイツを救う国民的英雄、ジークフリートとして彼女の前に現れたのである。そして傍には戦争で負傷したジークフリートを支え、ドイツ語を教え、政界に送り出した、愛人エヴァが仲睦まじく立っていた。

 

常に戦争は人間の運命の歯車を大きく狂わせてしまう。・・・生きること、祖国、戦争、そして愛とは何か?・・・この作品はジャーク・フォレスチエ(ジークフリート)、ジュヌビエーブとエヴァの三人が運命に翻弄されながらも、自らの道を選択して行く、美しくも、儚いドラマである。

 

きっとジャン・ジロドウは独仏を対立軸に、男女の愛を描きながら平和な世界がくるものと祈りながら書いたに違いありません。しかし残念ながら21世紀になっても、寧ろナショナリズムが幅を利かせて横行しています。こう云った風潮には、私たちは毅然として戦って行かなければなりません。

 

さて皆様には、この「ジークフリート」によって、オーソドックスな、言葉の美しい大人のミュージカルお見せ出来ると思います。因みにこれを機会に、舞台で活躍されている、或いは活躍したい人たちも是非とも参加して頂きたいと考えています。幅広くオーディション、ワークショップをして、多くの仲間と協力して創り上げたい。ご興味、御関心のある方は、挙ってお申し込み下さい。